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2012-04-29

なぜ日本人は落合博満が嫌いか?

角川oneテーマ21
テリー伊藤著

去年、中日ドラゴンズはリーグ優勝を果たし、監督の落合博満は4度目のリーグ優勝を果たした。落合は8年間で日本一を1回達成し、8年間全てAクラスを果たした。 この成績なら名監督の称号に値するものだが、思ったより落合の評判というものは高くないので、それには驚きを隠せない。

私自身、落合は選手を大事に扱える素晴らしい監督だと思うが、なぜか評判はよろしくない。なぜよろしくないのか疑問に思ったので、今回テリー伊藤著の「なぜ日本人は落合博満が嫌いか?」を読んでみた。

この本を読んで、落合が嫌われているという現状を知ったので、嫌われている理由を3点挙げてみる
①弱音を吐かないから
②WBCへの参加を拒否したから
③ファン感謝祭に参加しなかったから

彼が嫌われている理由を5点挙げたが、彼の考えさえ理解できればこの5つは別に悪いことではないし、彼のことを悪く言えないと思う。

①日本人は勝ったときも負けたときも謙虚であることが美徳と思われているが、彼はそうじゃない。負けていても強気な発言をする。人間というのは追い込まれると、弱気になってしまうものだから、中日が負けているときに落合が強気な発言をするのは理解できないのだろう。落合は一喜一憂せず、全体を冷静に見ることができるのだから、強気な発言ができるのだろう。だから追い込まれても動じないし、むしろ追い込まれてから本領を発揮するのだと思う。このように落合は強気な発言をするものの、決して口先だけではない。

そのような姿勢だから、現役時代、2ストライクに追い込まれても三振を喫することが少なかったし、冷静に4球待ったり、 ホームランを狙って打つことができたのだろう。この点からすると、彼に3度の三冠王は伊達ではないのだろう。だから中日の監督を務めているときも、試合が勝っていようが負けていようが、一喜一憂せずに、試合の成り行きを冷静に見て、適切な判断が下せたのだろう。

②2009年、WBCが開催されたが、落合は選手誰一人参加させなかったのだ。理由は前年の北京オリンピックに参加した選手に怪我人が出たので、それを防ぐためであった。彼の持論は、プロ野球選手は一事業主であり、日本野球機構(NPB)の社員ではないので参加する義務はなく、選手個人の意見を尊重するというものである。彼の持論は素晴らしいものだが、言い訳がましくない彼の性格が災いし、これを公に明かすことはなく、批判を浴びることとなってしまう。日本人と言うのは、組織の中で1人の人間が異論を唱えると頭ごなし批判するきらいがある。これはまさしくそれであると言えよう。

③2009年のファン感謝祭に落合は出席しなかった。理由は中日はその年に優勝できず、勝つことが最大のファンサービスと唱える彼にファン感謝祭に参加する資格はないと自分自身で思っていたことであろう。彼は自分の信念にのみ従って生きる自由人なんだろう。しかし、言い訳がましくない彼は欠席の理由を明かそうとしないので、結局のところ批判され嫌われてしまう。


確かに落合は無表情で口下手だからマスコミ受けは良くないかもしれないけど、上に立つ人間の器であることは間違いないと思う。落合は、「野球はあくまでも選手が主役で、監督は選手を支えるのが仕事」と考えているが、これは正しくその通りだと思う。やはり野球に限らず、スポーツというのは選手よりも指導者が目立つと選手がだめになり、結果が出せなくなるのだろう。これは星野JAPANを例として挙げるなら一目瞭然だろう。落合に限らず、なでしこJAPANの監督を務める佐々木則夫も決して目立とうとせず、澤穂希や川澄奈穂美のような主力選手に花を持たせている。このように一流指導者というものは選手よりも目立たないことが最低条件なんだろう。21世紀に求められるリーダー像というのは落合のような人物を言い、上に立つ人間は彼を模範とするべきなんだろう。